2021年4月以降のルールです。2024年に書いています。
年度毎(4月1日から)に改定されます。
平成16年度の 78,900円に乗ずる改定率が改定されます。
ざっくり解説
解説は私感です。
最も基本的な改定率:賃金変動率を基準に改定します。
世の中の給料にあわせて、年金も上げ下げしましょう、という話です。
これが適用されるのは、67歳までで、どちらかというと例外気味なのですが、条文の流れで書いています。
ただし、68歳以上の場合は、物価変動率を基準にします。
働くのをやめてしばらく経ったのだから、給料には連動させずに、物価に連動すれば、同じ買い物ができるて問題ないでしょ、という話です。
ただし、物価変動率>賃金変動率の場合は、賃金変動率を基準にします。
物価が上がったとしても、働いている人が苦しいのだから、皆で苦労をともにしましょうという話です。
さらに、このルールだと財政が厳しいので、しばらくの間、追加ルールが加わっています。
賃金変動率と物価変動率の計算結果に、徐々に減額されるような調整率を掛けます。
ただし、1以下になる(前年度より安くなる)場合は、1にします。
働く人の人口が減っていて、平均寿命は延びているため、財政が厳しいので、全体に減額しようという話です。
しかし、物価上昇等で本来増額なのに減額になってしまうのはあんまりなので、そうなる場合には前年度維持になります。
賃金変動率が元々1以下の時は、調整しません。
減額の額が広がるような調整はさすがにしません。元の率による減額のままです。
増える場合に、ちょっとずつ増え幅を減らしていこうという策です。
調整できなかった率は翌年以降に繰り越し、調整率にさらに特別調整率として掛けます。
少し詳しい解説
用語をだいぶ端折りましたので、用語も織り交ぜながら解説します。
2024年現在は、調整期間ですので、いわゆるマクロ経済スライドによる調整が行われます。
68歳の誕生日の前日が属する年度より前の場合は、新規裁定者の改定率になります。
算出率 = 名目手取り賃金変動率 × 調整率 × 特別調整率
名目手取り賃金変動率またはマクロ経済スライドによる調整により、1未満になる場合は、名目手取り賃金変動率になります。
調整が行われなかった場合、翌年以降の特別調整率になります。
68歳の誕生日の前日が属する年度以降の場合は、既裁定者の改定率になります。
算出率 = 物価変動率 × 調整率 × 特別調整率
物価変動率<名目手取り賃金変動率の場合は、新規裁定者と同じ算出率になります。
物価変動率も同様にマクロ経済スライドによる調整がされます。
給付の種類 | 年金額 | |
老齢基礎年金 障害基礎年金(2級) 遺族基礎年金 | 780,900円 × 改定率 | |
障害基礎年金(1級) | 780,900円 × 改定率 × 1.25 | |
障害基礎年金・遺族基礎年金の子の加算額 振替加算の算定基礎額 | 224,700円 × 改定率 | 子の加算額は新規裁定者の改定率 |
第3子以降の加算額 | 74,900円 × 改定率 | 子の加算額は新規裁定者の改定率 |
このような制度の基本的な金額は、100円単位に四捨五入します。個別の年額の裁定は1円単位に四捨五入します。
詳しい解説
(改定率の改定等)
第二十七条の二 平成十六年度における改定率は、一とする。
平成16年度が基準になります。
既裁定者の改定率(調整期間終了後)
2 改定率については、毎年度、第一号に掲げる率(以下「物価変動率」という。)に第二号及び第三号に掲げる率を乗じて得た率(以下「名目手取り賃金変動率」という。)を基準として改定し、当該年度の四月以降の年金たる給付について適用する。
一 当該年度の初日の属する年の前々年の物価指数(総務省において作成する年平均の全国消費者物価指数をいう。以下同じ。)に対する当該年度の初日の属する年の前年の物価指数の比率
二 イに掲げる率をロに掲げる率で除して得た率の三乗根となる率
イ 当該年度の初日の属する年の五年前の年の四月一日の属する年度における厚生年金保険の被保険者に係る標準報酬平均額(厚生年金保険法第四十三条の二第一項第二号イに規定する標準報酬平均額をいう。以下この号及び第八十七条第五項第二号イにおいて同じ。)に対する当該年度の前々年度における厚生年金保険の被保険者に係る標準報酬平均額の比率
ロ 当該年度の初日の属する年の五年前の年における物価指数に対する当該年度の初日の属する年の前々年における物価指数の比率
三 イに掲げる率をロに掲げる率で除して得た率
イ 〇・九一〇から当該年度の初日の属する年の三年前の年の九月一日における厚生年金保険法の規定による保険料率(以下「保険料率」という。)の二分の一に相当する率を控除して得た率
ロ 〇・九一〇から当該年度の初日の属する年の四年前の年の九月一日における保険料率の二分の一に相当する率を控除して得た率
3 前項の規定による改定率の改定の措置は、政令で定める。
物価変動率は、暦年平均の全国消費者物価指数の昨年の変動率です。
$$
物価変動率 = (条文の1号の式)= \frac{前年の物価指数}{ 2年前の物価指数 } \\
= 前年の物価変動率
$$
名目手取り賃金変動率 = 物価変動率 × 2~4年度前の実質賃金変動率 × 可処分所得割合変化率(現在は1)
$$
2~4年度前の実質賃金変動率 =(条文の2号の式)= \sqrt[3]{\frac{\frac{2年度前の標準報酬平均額 }{5年度前の標準報酬平均額 }}{\frac{2年前の物価指数 }{5年前の物価指数 }}} \\
= \frac{2~4年度前の標準報酬平均額の変動率の平均 }{2~4年前の物価変動率の平均 } \\
$$
可処分所得割合率は、4年前と3年前の厚生年金保険の保険料率から求めますが、保険料率が一定になりましたので、割合は1固定になっています。保険料率を上昇させていったときの補正でした。
既裁定者の改定率(調整期間終了後)
第二十七条の三 受給権者が六十五歳に達した日の属する年度の初日の属する年の三年後の年の四月一日の属する年度(第二十七条の五第一項第二号及び第三項第一号において「基準年度」という。)以後において適用される改定率(以下「基準年度以後改定率」という。)の改定については、前条の規定にかかわらず、物価変動率(物価変動率が名目手取り賃金変動率を上回るときは、名目手取り賃金変動率)を基準とする。
2 前項の規定による基準年度以後改定率の改定の措置は、政令で定める
基準年度は、68歳の誕生日の前日が属する年度になります。
例:
1955年4月1日生まれの場合
65歳に達した日 2020/3/31
属する年度 2019年度
年度の初日 2019/4/1
属する年2019年
3年後の年の4月1日
2022/4/1
属する年度 2022年度
1955年4月2日生まれの場合
65歳に達した日 2020/4/1
属する年度 2020年度
年度の初日 2020/4/1
属する年2020年
3年後の年の4月1日
2023/4/1
属する年度 2023年度
新規裁定者の改定率(調整期間)
(調整期間における改定率の改定の特例)
第二十七条の四 調整期間における改定率の改定については、前二条の規定にかかわらず、名目手取り賃金変動率に、調整率(第一号に掲げる率に第二号に掲げる率を乗じて得た率(当該率が一を上回るときは、一)をいう。以下同じ。)に当該年度の前年度の特別調整率を乗じて得た率を乗じて得た率(当該率が一を下回るときは、一。第三項第二号において「算出率」という。)を基準とする。
一 当該年度の初日の属する年の五年前の年の四月一日の属する年度における公的年金の被保険者(この法律又は厚生年金保険法の被保険者をいう。)の総数として政令で定めるところにより算定した数(以下「公的年金被保険者総数」という。)に対する当該年度の前々年度における公的年金被保険者総数の比率の三乗根となる率
二 〇・九九七
2 名目手取り賃金変動率が一を下回る場合の調整期間における改定率の改定については、前項の規定にかかわらず、名目手取り賃金変動率を基準とする。
3 第一項の特別調整率とは、第一号の規定により設定し、第二号の規定により改定した率をいう。
一 平成二十九年度における特別調整率は、一とする。
二 特別調整率については、毎年度、名目手取り賃金変動率に調整率を乗じて得た率を算出率で除して得た率(名目手取り賃金変動率が一を下回るときは、調整率)を基準として改定する。
4前三項の規定による改定率の改定の措置は、政令で定める。
算定率 = 名目手取り賃金変動率 × 調整率 × 前年度の特別調整率
算定率は1が下限です。
$$
調整率 = \sqrt[3]{\frac{2年度前の公的年金被保険者総数 }{5年度前の公的年金被保険者総数 }} \times 0.997 \\
= 2~4年度前の公的年金被保険者総数の変動率 \times 0.997
$$
被保険者の減少を想定した値なので、1が上限になります。
名目手取り賃金変動率が1未満のときは、算定率を使わずに、名目手取り賃金変動率を使います。
特別調整率は、平成29年度が1(調整なし)です。
特別調整率の改定
$$
特別調整率の改定率 = (3項2号の式) = \frac{名目手取り賃金変動率 \times 調整率}{算出率} \\
= \frac{名目手取り賃金変動率 \times 調整率}{名目手取り賃金変動率 × 調整率 × 前年度の特別調整率} \\
= \frac{1}{前年度の特別調整率}
$$
繰り越さない場合
改定率は分かりにくい式ですが、結局のところ、次年度に持ち越す特別調整率は1になります。
$$
当年度の特別調整率 = 前年度の特別調整率 \times 特別調整率の改定率 = 1
$$
繰り越す場合は、当年度の特別調整率の改定率は、当年度の調整率になります。
次年度に持ち越す特別調整率は、前年度の特別調整率に当年度の調整率が加味されます。
$$
当年度の特別調整率 = 前年度の特別調整率 \times 調整率
$$
既裁定者の改定率(調整期間)
第二十七条の五 調整期間における基準年度以後改定率の改定については、前条の規定にかかわらず、第一号に掲げる率に第二号に掲げる率を乗じて得た率(当該率が一を下回るときは、一。第三項第一号ロにおいて「基準年度以後算出率」という。)を基準とする。
一 物価変動率(物価変動率が名目手取り賃金変動率を上回るときは、名目手取り賃金変動率)
二 調整率に当該年度の前年度の基準年度以後特別調整率(当該年度が基準年度である場合にあつては、当該年度の前年度の前条第三項に規定する特別調整率)を乗じて得た率
2 次の各号に掲げる場合の調整期間における基準年度以後改定率の改定については、前項の規定にかかわらず、当該各号に定める率を基準とする。
一 物価変動率が一を下回るとき(次号に掲げる場合を除く。)物価変動率
二 物価変動率が名目手取り賃金変動率を上回り、かつ、名目手取り賃金変動率が一を下回るとき名目手取り賃金変動率
3 第一項の基準年度以後特別調整率とは、第一号の規定により設定し、第二号の規定により改定した率をいう。
一 基準年度における基準年度以後特別調整率は、イに掲げる率にロに掲げる率を乗じて得た率とする。
イ 基準年度の前年度の前条第三項に規定する特別調整率
ロ 物価変動率(物価変動率が名目手取り賃金変動率を上回るときは、名目手取り賃金変動率)に調整率を乗じて得た率を基準年度以後算出率で除して得た率(物価変動率又は名目手取り賃金変動率が一を下回るときは、調整率)
二 基準年度以後特別調整率については、毎年度、前号ロに掲げる率を基準として改定する。
4 前三項の規定による基準年度以後改定率の改定の措置は、政令で定める。
基準年以後算出率 = 物価変動率(または名目手取り賃金変動率) × 調整率 × 前年度の基準年度以後特別調整率
物価変動率>名目手取り賃金変動率<1 のとき、名目手取り賃金変動率
上記でなく、物価変動率<1 のとき、物価変動率
結局のところ、物価変動率と名目手取り賃金変動率の低い方を利用して、その低い方が1未満であれば、マクロ経済スライド調整はしません。
基準年度以後特別調整率は、結局のところ計算すると新規裁定者の特別調整率と同じになります。
消費者物価指数(CPI)
こちらを読むと仕組みが分かりやすいです。
https://www.stat.go.jp/data/cpi/2020/mikata/index.html
消費者が小売店で購入するときの価格がもとになります。そのため、消費者物価指数と呼ばれます。企業間取引の場合は、別の指数になります。
家計の中で消費支出の重要度が高く、価格変動を代表できる物を、指数品目として選び出します。家計調査を基にしています。
582品目あります。それぞれに支出額によって、ウエイトが付けられます。基準は、5年毎に改定されます。
大分類。ウエイトは、合計で10,000になります。
食品 2626
住居 2149
光熱・水道 693
家具・家事用品 387
被服及び履物 353
保健医療 477
交通・通信 1493
教育 304
教養娯楽 911
諸雑費 607
細かい品目では、たとえば、まぐろ 22、干ししいたけ 1、ガソリン 182、通信量(携帯電話)271、携帯電話機 90、PTA会費(小学校)14、大学授業料(私立)91のようになっています。
実際に小売店での販売価格を毎月調査します。
基準時加重相対法算式(ラスパイレス型)という名前の方式で計算します。
毎回同じ品目を同量買った場合の値段の変化になります。
毎月19日を含む週の金曜に公表されます。
前年比は、1月から12月までの平均の前年との比です。。
前年度比、4月から翌3月までの平均の前年度との比です。
生鮮食品を除くことがあります。これは、天候の影響を強く受けるためです。
生鮮食品のウエイトは、396/10,000です。
2020 | 2021 | 2022 | 2023 | 2024 | |
総合指数 | 100 | 99.8 | 102.3 | 105.6 | |
前年比 | 0.0% | -0.2% | +2.5% | +3.2% |
(出典:総務省統計局、2020年基準 消費者物価指数 全国 2023年(令和5年)平均)