まず、iDeCoの運用方法と、出口戦略を考えるために、各種金額を計算してみます。
iDeCoにかかる手数料
加入時手数料 2,829円
口座管理手数料
拠出する場合 171円/月 (年2,052円)
拠出しない場合 66円/月 (年792円)
掛金の受け取り時
給付手数料 440円/回
額が小さいので、今回の計算では考慮しません。
税金
拠出時は、全額が所得控除になります。住民税10%と、所得税5%~45%の節税効果があります。
受け取り時の税金は、数十年後になるため、制度がどのようになっているか分かりませんが、2024年現在の制度で検討します。
一時金として受け取る場合
所得税の区分としては、退職所得になります。
退職所得控除額
20年以下:40万円×勤続年数
20年以上:800万円+70万円×(勤続年数ー20年)
(退職所得ー退職所得控除額)÷2が、課税退職所得額です。2037年までの復興税(2.1%)は考慮していません。
税額 (A×BーC)
A 課税退職所得金額 | B 税率 | C 控除額 |
1000円以上 1,949,000円未満 | 5% | 0円 |
1,950,000円以上 3,299,000円未満 | 10% | 97,500円 |
3,300,000円以上 6,949,000円未満 | 20% | 427,500円 |
6,950,000円以上 8,999,000円未満 | 23% | 636,000円 |
9,000,000円以上 17,999,000円未満 | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円以上 39,999,000円未満 | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円以上 | 45% | 4,796,000円 |
年金として受け取る場合
全部または一部を年金として受け取ることもできます(金融期間によります)。
5年から20年の有期年金、または終身年金として受け取れます(金融機関によります)。
所得税の区分としては、雑所得(公的年金等)になります。
65歳以上の場合
公的年金等の収入額 | 公的年金等に係る雑所得の金額 |
110万円以下 | 0円 |
110万円超330万円未満 | 収入金額 ー 110,000円 |
330万円以上410万円未満 | 収入金額×0.75 ー 27,500円 |
410万円以上770万円未満 | 収入金額×0.85 ー 68,500円 |
770万円以上1000万円未満 | 収入金額×0.95 ー 145,500円 |
1000万円以上 | 収入金額 ー 195,500円 |
概算ツール
このツールはあくまで概算計算を目的としており、正確な税額計算には税理士等にご相談ください。
このツールの使用による結果について責任を負いません。
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モデルケース
共通のパラメータ
・インフレ率2%
・他の退職金 1,000万円(中小企業を想定)
・退職金を計算する在職年数 40年
25歳から65歳まで40年間、月1万円拠出するケース
年収600万円で、所得税率10%を想定
総拠出額 480万円
拠出時の減税効果 96万円
投資信託の成長率 | 最終的な累計額 |
1% | 590万円 |
3% | 926万円 |
5% | 1526万円 |
8% | 3491万円 |
5%や8%で運用できると、退職金では控除しきれないため、受け取るときの方法を考える必要がありそうです。
45歳から65歳まで20年間月2万円拠出するケース
年収800万円で、所得税率20%を想定
総拠出額 480万円
拠出時の減税効果 144万円
投資信託の成長率 | 最終的な累計額 |
1% | 531万円 |
3% | 657万円 |
5% | 822万円 |
8% | 1178万円 |
8%で運用しても、退職所得控除額でカバーできます。
検討
元本保証の選択はメリットがあるか
25歳~65歳まで40年間、年1万円積み立てた場合
インフレ率2%
投信の年間リターン 0.05%
住民税+所得税=20%
総拠出額 480万円
インフレ率2%だと、40年後には 734万円以上にならないと、実質的には目減りしていることになります。
投資信託のリターンは、5万円増えて485万円です。
拠出時の節税効果96万円です。各年ごとに現金で還元されるので、インフレ率を考慮すると、145万円の価値になります。
734-485-145=104
実質104万円の損失になります。
所得税率20%でも、144万円(インフレ考慮217万円)で、32万円の損失になります。
40年間、ほぼ元本のまま資産が拘束されるのは、節税効果が打ち消されてマイナスになります。やる価値がありません。
45歳~65歳まで20年間、年2万円積み立てた場合
インフレ率2%
投信の年間リターン 0.05%
住民税+所得税=30%
総拠出額 480万円
インフレ率2%だと、20年後には 590万円以上にならないと、実質的には目減りしていることになります。
投資信託のリターンは、2万円増えて482万円です。
拠出時の節税効果144万円です。インフレ率を考慮すると、174万円の価値になります。
590-482-174=-66
実質66万円の利益になります。
これは、3.0%で運用したのと同じ結果になります。
所得税が10%の場合は、節税効果が96万円になります。インフレ率を考慮すると、116万円の価値になります。
実質8万円の利益になります。
これは、2.1%で運用したのと同じ結果になります。
まとめ
期間が20年未満など短めで、年収が700万円以上あるなら、節税効果が少しはあります。
また、期間が短いと運用がマイナスになる商品も少なくありませんので、元本保証型も十分選択肢になりえます。
期間が長くなる場合や、年収の上昇が望めない場合は、節税効果が打ち消されてしまうので、あまり多くの金額を元本保証型に割り当てないほうが良いでしょう。